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臨時雇として1年間の雇用期間を定めて雇用されていた労働者が、
1年の期間満了により雇用契約の更新を拒否をされたが、
当該雇止めは認められるのでしょうか。
【事件の概要】
平成元年1月22日、Xは、Yに臨時雇運転手として雇用されました。
XとYとの契約期間は、平成元年1月22日から平成2年1月20日までとされていました。
Yは、契約期間が満了する平成2年1月20日、Xに対し、
解雇予告手当を支払うことにより、
同日をもって解雇する旨の意思表示(更新拒絶)を行いました。
そこで、Xは、Yに対して、
Yの従業員としての地位保全等の仮処分を求めて争いました。
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【判決の概要】
(4)臨時雇運転手の雇用期間については、
取り交わされる契約書上は1年の期間が定められているものの、
昭和54年の臨時雇運転手制度の導入以降、
自己都合による退職者を除いては、
例外なく雇用契約が更新(再契約)されてきており、
Yにおいて契約の更新を拒絶した事例はありません。
また、雇用契約の更新の際には、改めて契約書が取り交わされているが、
Yにおいて、必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続をとっていたわけでもなく、
契約書上の更新(再契約)の日付が数か月も後日にずれこんだ事例も存在します。
(5)Yは、右臨時雇運転手制度の導入後においては、
本雇運転手に欠員が生じたときは、
臨時雇運転手で希望する者の中から適宜の者(50歳未満の者で、勤務成績が良好な者等)を本雇運転手に登用してこれを補充してきており、
昭和54年の右制度の導入後において、
直接、本雇運転手としてYに雇用された運転手はいません。
本件雇用契約は、平成元年1月22日から平成2年1月20日までの期間の定めのあるものであって、
これを期間の定めのない雇用契約であると認めることはできないが、
右1認定のYにおける臨時雇運転手にかかる雇用契約の実態に関する諸般の事情(ことに、(4)、(5)の事実)に照らせば、
その雇用期間についての実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、
Xにおいて、右契約期間満了後もYがXの雇用を継続するものと期待することに合理性を肯認することができるものというべきであり、
このような本件雇用契約の実質に鑑みれば、
前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らして、
従前の取扱いを変更して契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情が存しないかぎり、
Yにおいて、期間満了を理由として本件雇用契約の更新を拒絶することは、
信義則に照らし許されないものと解するのが相当です。
Yは、本件更新拒絶は、Yの経営不振の中での人員削減の方針の下で、
たまたま最初に雇用期間が満了するXに対し行ったものであって、
合理的な理由がある旨主張するが、
本件全疎明資料によるも、
前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らし、
従前の取扱いを変更して本件雇用契約の更新を拒絶することが相当と認められるほどYにおいて経営不振に陥り、
人員削減の必要に迫られていたものと一応認めるには足りないから、
その余の点について判断するまでもなく、右主張は理由がありません。
【関連判例】
→「日立メディコ事件と有期契約の更新拒絶(雇止め)」
→「東芝柳町工場事件と有期労働契約の反復と雇止め」
→「丸島アクアシステム事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「ロイター・ジャパン事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「旭川大学事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「カンタス航空事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「京都新聞COM事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「明石書店(製作部契約社員・仮処分)事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「近畿コカ・コーラボトリング事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「雪印ビジネスサービス事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「本田技研工業事件と有期雇用契約の更新拒否(雇止め)」
→「日本郵便(苫小牧支店時給制契約社員B)事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」