近畿コカ・コーラボトリング事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)

(大阪地判平17.1.13)

スポンサーリンク










労働者が不更新条項等の内容について理解・認識した上で、

そのような不更新条項等が付された契約書に、

特に異議を申し立てることもなく署名・押印しているような場合、

雇用契約の期間満了を理由とする雇止めは認められるのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、清涼飲料の製造および販売等を行う会社です。

Xらは、平成元年から5年にかけてパートとして採用され、

平成7年に、雇用期間の定めのあるパートナー社員労働契約書を作成していました。

Yは、Xらに対して、各雇用契約の期間満了を理由とする雇止めを行いました。

そこで、Xらは、本件雇止めには解雇に関する法理が類推適用されるところ、

合理的な理由がないから無効であると主張するとともに、

XらとYの間において各雇用契約を終了させる旨の合意はないなどと主張して、

それぞれYの従業員たる地位にあることの確認等を求めて争いました。

スポンサーリンク










【判決の概要】


YとXらが平成7年4月にパートナー社員労働契約書を作成するようになるまでの間、

本件各雇用契約に期間の定めがあったのか否かは、

本件全証拠によっても明らかではありません。

もっとも、YとXらは、平成7年4月以降は雇用期間の定めのある契約を締結し、

平成8年1月以降は、平成14年12月までの間、

雇用期間1年の雇用契約の更新を続けていたと認められます。

したがって、本件各雇用契約は、少なくとも平成7年4月以降に関しては、

期間の定めのある契約であって、その更新が繰り返されたことをもって、

雇用契約自体が期間の定めのない契約となるものということはできません。

しかしながら、本件において、

①Xらの従事していた業務は、

Yがカップオペレーション業務を行う限り必要な業務であって、

特に臨時的な性質はなかったこと、

②Xらは、集金業務を担当しないなどの一部の違いはあるものの、

正社員と同様の業務に従事していたこと、

③Xらは、Yに採用されてから本件雇止めまでの間については、

9年ないし13年にわたってYにおける勤務を継続しており、

平成7年4月以降に限っても、7年以上にわたって勤務を続け、

契約も7回にわたって更新され続けたこと、

④契約更新の際には、YがXらに契約書を交付した上、

Xらがこれに署名押印してYに提出するという手続がとられていたものの、

契約書の作成時期が新たな雇用期間の始まった後になることもあったこと、

⑤契約書の作成に当たり、YからXらに対し、

契約書の内容の確認を求めることがあっても、契約更新の意思について、

明確な意思確認が行われることはなかったこと、

⑥本件雇止めまでの間は、Yがパートナー社員を雇止めにしたことはなかったことが認められます。

そして、以上の事実を考慮すると、本件各雇用契約について、

期間の定めのない契約と実質的に何ら異ならない状態にあるとまではいえないとしても、

その雇用関係は、ある程度の継続が期待されていたというべきであり、

Yが雇止めによって雇用関係を終了するためには、

解雇に関する法理が類推適用されるというべきです。

前記認定(略)によれば、

①Yは、平成13年11月、Xらに対し、説明会を実施して、

Xらを含むパートナー社員(フルサービスメイト)との間の雇用契約は、

平成14年12月末をもって満了となり、以後の継続雇用はしないので、

残りの有給休暇を全部使ってほしい、

そして、平成14年度のパートナー社員労働契約書には、

不更新条項を入れると説明した上で、平成14年度の契約更新の希望を確認したこと、

②Yは、平成13年12月、Xらに対し、

平成14年度の雇用契約に関する本件各契約書を交付したが、

同契約書には、不更新条項の記載があるほか、

従前作成されていたパートナー社員労働契約書と内容が一部異なるものであったところ、

Xらは、これに署名押印した上、確認印も押印していること、

③同契約書については、Xらは1通を自ら保管していたが、

Yに対して、異議を述べることはなかったこと、

④Xらは、平成13年度の有給休暇の消化率は60%前後であったが、

平成14年度は100%であること、

⑤1週間の所定労働時間が短いために雇用保険の被保険者とならないという取扱いを受けるおそれがあったパートナー社員の大半(フルメイトに限っても過半数)は、

雇用保険の被保険者となるよう労働時間を増やすことを選択したことが認められます。

Xらは、本件各契約書の内容を読まなかったなどと述べるのであるが、

Xらは、本件各契約書に自ら署名押印している以上、

本件各契約書は真正に作成されたことが推定される(民事訴訟法228条4項)ものであり、

Yが事前に説明会を行っていることをあわせて考慮すれば、

不更新条項を含む本件各契約書の作成はXらの意思に基づくというべきです。

以上のとおりであるから、YとXらとの間においては、

平成14年12月末日をもって本件各雇用契約を終了させる旨の合意が成立していたというべきであり、

これを覆すに足りる証拠はありません。

【関連判例】


「日立メディコ事件と有期契約の更新拒絶(雇止め)」
「東芝柳町工場事件と有期労働契約の反復と雇止め」
「龍神タクシー事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「丸島アクアシステム事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「ロイター・ジャパン事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「旭川大学事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「カンタス航空事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「京都新聞COM事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「明石書店(製作部契約社員・仮処分)事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「雪印ビジネスサービス事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
「本田技研工業事件と有期雇用契約の更新拒否(雇止め)」
「日本郵便(苫小牧支店時給制契約社員B)事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」