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有期労働契約を結んだ労働者が、
契約期間途中で解雇されたが、
当該解雇は認められるのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、私立高等学校を設置する学校法人です。
Xは、平成21年4月1日、Yとの間で、
4年間の有期契約を締結し、塾長(校長)に就任しました。
Yは、平成22年3月12日、理事会を開催し、
Xに対して塾長を解職する旨の緊急動議を提出し、
全理事数13名のうち、Xを除く出席者7名の賛成で可決されました。
Yは、翌日、Xを解職する旨の通知をし、解雇予告手当を支払いました。
そこで、Xは、解雇は無効であると主張し、
労働契約上の地位確認と賃金等の支払いを求めて争いました。
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【判決の概要】
法17条1項は、やむを得ない事由がある場合でなければ、
期間の定めのある労働契約について、
契約期間が満了するまでの間において解雇ができない旨規定します。
同条が、解雇一般につき、
客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性がない場合には解雇を無効とする法16条の文言をあえて使用していないことなどからすると、
法17条1項にいうやむを得ない事由とは、
客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、
当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当です。(中略)
以上の諸点を総合的に検討すると、
Xは、卒業祝賀会や平成22年3月4日の礼拝に際し、
学校関係者への配慮を欠いた発言をしており、
また、事業部が炭酸飲料の撤去に直ちに応じないのに対し、
事業部の管理に係る自動販売機に無断で張り紙をするなど、
やや乱暴で思慮を欠くというべき行動をとっており、
校務をつかさどり、
所属職員を監督する塾長としての見識が十分でない面があることは否定できません。
しかしながら、清涼飲料水の自動販売機などに張り紙を貼るなどした行為については、
東奥義塾高校の生徒の健康を図る目的があり、
卒業祝賀会における発言については、
父兄の労苦をねぎらうなどの意図でなされたものと認められ、
極めて不適切とはいえず、
平成22年3月の言動は、Xが、東奥義塾高校から排除される懸念を抱いたことによりなされたものとも推測され、
その後、実際に本件解職処分が行われたことも踏まえると、
同様に極めて不適切とはいえません。
そして、Xの塾長としての活動により、
職員会議への職員の出席率が向上し、
学生の態度に良好な変化があったと認められ(〈人証略〉)、
Xは、4年の任期の初年度において、
すでに、塾長として一定の成果を出していたことに照らすと、
Xが、塾長として、教職員らからの一定の信頼を得ていたと認められます。
これに加え、証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によれば、
Xには、そもそも管理職経験はおろか国内における一般的な教職経験もなかったものであり、
乙山理事長をはじめとする理事会がこれを承知であえてXを塾長として採用したと認められるのであって、
各理事、理事会においても、これを踏まえて、
Xの経験不足の点を補完すべきであったと解されるところ、
理事会がこれを全うしたとは認められません。
以上の諸事情を勘案すると、本件解職処分には、
法17条1項にいうやむを得ない事由があったとは認め難いです。
したがって、その余の点を判断するまでもなく、
本件解職処分は法17条1項により無効であり、
Xは、Yに対して、労働契約上の地位を有すると認められます。
【労働契約法16条(解雇)】
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【労働契約法17条(契約期間中の解雇等)】
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
◯2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
【関連判例】
→「X学園事件と契約期間途中での解雇」
→「安川電機八幡工場事件と契約期間途中での解雇」